THE BOHEMIANSが自らのバンド名を冠したイベント「THE BOHEMIANS EVENT」Vol.0を開催!
THE BOHEMIANS 出演「Rock is LIVE」 5月26日開催!
2016年1月30日(土)、THE BOHEMIANSが高円寺HIGHにて主催イベントを開催。共演はMagic, Drums & LoveとTHE FOREVERS。イベント名は「THE BOHEMIANS EVENT」。コンセプトすらうたわないネーミングは、ストレートなロックンロール・アルバム『brother, you have to wait』をリリースした、バンドの現在地を表しているかのようだ。つまりは「ただ楽しめ」ということらしい。19時10分、ボーカルの平田ぱんだが開催宣言をするために登場。「堅苦しく挨拶をやろうと思っていたが、リハを眺めていたら、そんなことやってられるか、という思いになった」そうで、彼はひと言だけ「THE BOHEMIANS EVENT、これを以って開催!」と宣言。つまりは「ただ楽しめ」ということらしい。
トップバッターはMagic, Drums & Love。住所不定無職のメンバーを中心に結成されたファンキーなバンドだ。彼らは代表曲「Fly me to da moon,」や「フシギ”TONIGHT”」をはじめ、メロウかつディスコかつファンクな楽曲を次から次に披露してくれた。ロックンロール・バンドのイベントにしては意表をついたブッキングだが、これもミュージシャン主催のイベントならでは。例えば、筆者も昨年、音楽誌DONUTのイベントを4回開催したが、いずれもロックンロールというテーマでバンドをチョイスした。メディアの立場からイベントを開催すると、どうしてもカテゴリーやジャンルで縛ってしまう。これがミュージシャン主催になると、これまでの音楽活動の経緯をひっくるめた、バンドのアティチュードが大事なテーマになってくる。音楽やバンドに対するそれぞれのミュージシャンの姿勢に共感できるか否か。平たくいえば、同じ匂いを持っているかどうか。そこに音楽のジャンルはあまり意味を持たない。Magic, Drums & Love は、ライブの中盤、ロックンロールをファンクさせたアレンジで、なんとTHE CLASHの「Train in Vain」を、つづいてTHE BOHEMIANSの「麗しのグッドルッキングガイ」をカバー。ファンキーなバンドというカテゴリーを掲げながらも、そこをはみ出ようとする感性にTHE BOHEMIANSに共通するロックンロール・アティチュードを感じてしまった。
次にステージに登場したのはビートりょう扮する「ぽかりすえってい去年」。衣装のコンセプトはどこから見ても80年代のビートたけし。「ぽかりすえってい去年」はギターを掻き鳴らしながらTHE FOREVERSを賞賛する歌を披露し、ステージへと迎えた。ただ仲のいいバンドを招くだけではなく、幕の間に工夫を凝らすのも主催イベントならでは。後に平田ぱんだのブログでビートたけし風の衣装が意外にも高かったことを知り、ビートりょうの見えない努力に目頭が熱くなった。
二番手はTHE FOREVERS。彼らは元THE MOONLIGHTSのメンバーが中心になって、2013年に結成。2014年に活動を始めた。音楽性も佇まいもマインドもシックスティーズだが、なかでもグッド・メロディとラヴ・ソングにこだわっている。日本のバンドでいうなら、(THE COLLECTORSのベーシストで、THE ORANGESを率いている)JEFFが80年代から90年代にやっていたパワーポップ・バンド、ザ・シャムロックの系統に入る。この日は「Good Music」「Utopia」「Happy happy」など、2015年6月にリリースした1stミニ・アルバム『THE FOREVERS』の楽曲を中心に披露してくれた。そのなかでも異色だったのが、途中、「彼らとつるんでいた頃の曲のカバーをやります」といって演奏したTHE MOONLIGHTSの楽曲「僕等の未来を」。ラヴ・ソング中心のセットリストのなか、パンクなマインドの楽曲が放たれた瞬間の違和感はとても心地よかった(THE BOHEMIANSのアンコール・セッションでもTHE MOONLIGHTSの「真夜中に僕等」が演奏された)。THE FOREVERSもパワーポップとグッド・メロディを掲げながら、それだけはすまされない「揺さぶり」を仕掛けてきた。このイベント、一癖も二癖もある。
最後にステージに上ったのはTHE BOHEMIANS。この日のハイライトは4曲目の「愛しのマリーナ」が終わったあとに訪れた。「2つのバンドのおかげでめったにやらない曲をリラックスしてうたえる」といって「私のシンフォニー」「Get Back My Guitar」を演奏。さらに「新曲」として「恋の8cmシングル」が披露された。曲名の「8cmシングル」とは、今はもう生産されていない直径8cmのCDシングルのこと。今はシングルもアルバムと同じ大きさのCDだが、90年代は8cmのCDシングルが主流だった。その頃、THE BOHEMIANSのメンバーはリスナーとしての黄金時代だった。あの頃は毎週のようにミリオン・ヒットが出ていた。それを聴いて音楽の影響を受け、彼らはミュージシャンになった。「恋の8cmシングル」は、そういう思いが詰まったとても大事な曲なのだ。実はこの曲はずいぶん前から存在したという。できれば、実際にこの曲が8cmシングルとしてリリースされるまで公表したくないという思いがあったようだ。そんななか、昨年、DEENが8cmCDを復活させるというニュースが駆け抜けた。今年に入って某アイドル・グループもそれにつづいた。「恋の8cmシングル」をお披露目するには最高のタイミングだ。しかも自分たちの主催イベントで、自分たちの音楽を愛してくれるオーディエンスと、自分たちと同じアティチュードを持つバンドに見守られながら、自分たちの出発点を題材にした歌をお披露目できたのだ。それはとても幸福感に溢れた光景だった。この日のイベントのハイライトでありクライマックスでもあった。
そして彼らは、次のツアーに『「恋の8cmシングル」発売記念!? THE BOHEMIANS “夢の1996 TOUR” 2016』というタイトルをつけた。終盤は「明るい村」「ダーティリバティーベイビープリーズ」「That is Rock & Roll」の3曲をたたみかけ、最後に予定になかった「火の玉ロック」で本編は終了した。毎回、思うのだがTHE BOHEMIANSの洋楽ロックンロール・カバーは秀逸だ。ブルース・スプリングスティーンのように、アンコールでロックンロール・カバーを延々と演奏するコーナーをぜひつくってほしい。ロックンロールの伝道者としての役割を果たせるバンドはそう多くないのだから。アンコールではMagic, Drums & LoveとTHE FOREVERSのメンバーも参加して、忌野清志郎の「JUMP」、THE MOONLIGHTSの「真夜中に僕等」をカバー。最後に「おぉ!スザンナ」を演奏し、THE BOHEMIANS EVENTは終了した。3時間10分にわたるとても中身の濃いイベントだった。お互いのリスペクトとライバル関係(緊張感)の表出はライブハウスの空気をポジティブに変容させるのだな、と思った。こういうイベントはメディアやイベンターがいくら頑張っても成し得ない。ミュージシャンが主催したからこそ作りうる世界だ。こういうイベントを観ていると「カタログ・フェスが大手を振って歩いているようなシーンに風穴を開けたいな」という気分になる。最初は小さな風穴にすぎないけれど、フェスやイベントの質は規模感だけで測れるものではない。それが価値のある風穴であれば、そこから新しい変化がおこる。それがロックンロールということだ。(森内淳/DONUT)
セットリスト
Magic, Drums & Love
1.Fly me to da moon,/2.タイトル未定/3.kiss kiss/4.Train in Vain/5.麗しのグッドルッキングガイ/6.タイトル未定/7.Criminal B.P.M/8.フシギ”TONIGHT”
THE FOREVERS
1.Good Music/2.Utopia/3.恋はSo So Mad/4.Paradise/5.NOISE&GIRLS/6.2人暮らし/7.僕等の未来を/8.Happy happy/9.Don’t Let Me Down
THE BOHEMIANS
1.THE ROBELETS/2.male bee,on a sunnyday.well well well well!/3.ガール女モーターサイクル/4.愛しのマリーナ/5.私のシンフォニー/6.Get Back My Guitar/7.恋の8cmシングル/8.明るい村/9.ダーティリバティーベイビープリーズ/10.That is Rock & Roll/11.火の玉ロック En.1.JUMP/2.真夜中に僕等/3.おぉ!スザンナ
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